今回は、『農業のマーケティング教科書』(著:岩崎邦彦、出版:日本経済新聞出版社)を要約します。
この本は、こんな方にオススメです。
- 農業に携わっているが、なかなか売上が上がらない
- (広い意味での)製造業で働いているが、売り上げが上がらないことが悩み
- マーケティングを学んでみたいが、実例のイメージがつかない
- ブランディングについて、具体例をもっと知りたい
タイトルや内容としては”農業✕マーケティング”という形にはなっていますが、農業に限らず他の商品を販売マーケティングする上でも参考になる書籍でした。
「トマト」や「農業」という形で具体例が記載されているので、イメージがつきやすくとてもわかりやすいです。
この書籍から、僕がぜひ読んでほしいと思ったポイントを、3点取り上げて要約させていただきます。
ポイント1:農業って何?(第1章)
まず初めの第1章では、”農業を再定義しよう”と言う内容から始まります。
この章で著者が伝えたいのは、【農業と食と幸せが相関関係にあるのではないか】ということです。
確かに言われてみると、美味しいものを食べた時は嬉しかったり、楽しかったり、気分が良くなりますよね。
著者は「世界の人口一人当たり農産物食料品の輸出額のランキング」と、「幸福度のランキング」を並べて、以下のように仮説を立てています。
↓
輸出額のランキングのトップ10のうち、幸福度の世界ランキングでもトップ10入りしているは5カ国もある。
このデータはUNCTAD(2016年)やWorld Happiness Report(2017年)など、世界的な信頼のある機関が調査したデータとなっております。(ので、個人が憶測で出した適当なデータではなさそう、という意味合いです。)
「偶然にしては、あまりにも一致率が高いのではないか」
というのが、著者の主張です。
また、著者が行った消費者調査においても、以下のような質問をしたところ同じような結果が出たそうです。
Q ???に当てはまる単語を入れてください
①おいしい=???
②おいしいものを食べると、???
本書より、一部改変
結果としてはどちらも「幸せ」「嬉しい」「楽しい」「笑顔」「元気」、などの言葉が他の単語と比較して、かなり頻度高く回答されたそうです。
また、同じ消費者調査の中で「農」と「幸せ」の関係についても分析しています。
これによると、農業を身近に感じている人ほど幸福度が高く、食生活と農業の距離を近くに感じている人ほど幸福度が高いという分析結果が出たそうです。
統計学の分析的には「農」と「食」と「幸せ」の間には明らかにポジティブな関係が読み取れた、とのことです。
つまり、農の先には”おいしい”があり、”おいしい”の先には”幸せ”があると言う、関係性です。
言い換えると、農業は農産物の生産業という意味以上に、
【幸せ創造業】と表現しても過言ではない、
と著者は言い表しています。
ポイント2:野菜や果物ってどうやったら売れるの?(第2章〜第6章)
1章からの続きは、「野菜を売る」という具体的なマーケティングについてのお話です。
様々な角度から、農家さんを”マーケター”にするための知識が書かれています。
かなり具体に記載されていますので、詳しい内容は是非、本書でご確認ください。
しかしここで取り上げた理由は、実際の「何をするか(What)」「どうするか(How)」だけではなく「考え方(Why)」も同時に教えてくれる、ということです。
農業に限らず、マーケティングを学びたいと思っている人にとって、これほど最適と思える書籍はないのではないでしょうか。
本書の順序としては、考え方の部分を教えた上で、実際の”じゃあどうする?”、”どんな方法がある?”が記載されております。
これは僕の推論ですが、著者が本書で読者に伝えたいこととしては、
「作ったら終わり」「いいものを作ったら売れる」という発想を捨てて、
買う人が「どういうものを買いたくなるか?」「いつ何のために(≒何を作るために)買いたくなるか?」
ということを考えなければいけない、ということだと思います。
そのための考え方
- 消費者目線になろう
- 売るという言葉ではなく買うという言葉で考えよう
- 食べるものではなく食べることをイメージしよう
や、具体的な方法
- 消費者は農産物の品質をどう判断しているか
- 強いブランドを作るにはどうすればいいか
- 個性という違いを作るにはどうすればいいか
などを、分かりやすく説明しています。
このポイントを多くの農家さんに知っていただき、うまくマーケティングできるようになっていただければ、今よりも良い野菜や果物が市場に出回って、日本全体も幸せになるのではないかなと思います。
ポイント3:農業の横展開の可能性(第7章、第8章)
後半では、【農作物が売れる仕組み】という話から少し離れて、野菜や果物を売る以外のマネタイズの方法について書かれています。
本書で取り上げられているのは、
- 加工食品などの生産による六次産業化
- 農業体験
- 農家レストラン
です。
これは、どれも取り組まれている農家さんも多いかもしれませんね。
農業体験などは、最近ではネットで調べるとすぐに出てきます。
ただもちろん、これも”やれば儲かる”という話ではありません。
本書では、”どうしたら成功するか”、ということを主眼において解説されています。
ここでもやはり大事になるのは、マーケティングの考え方です。
「どういう人が農業体験に興味を持つのか」ということを考えて SNS などで情報発信をしなければ、一向に集客できない形になるのは想像がつくと思います。(そもそも、投稿を誰も見てくれない、ということになりそうですよね。)
そのような顧客像についても、本書では解説されています。
最近は”農家直送”というワードを売りにした飲食店も、首都圏では増えてきていますね。
自分でレストランを経営するのが難しいとしても、どこかのレストランでうまく使ってもらえれば、農家さんとしても、レストランとしても ”win-win” になるのではないかと思います。
(レストランなどの販路開拓の話は、本書には記載はありませんでした。他の書籍を読んでみるしかなさそうですね。)
まとめ
本書は、農家さんのみならず、マーケティングに興味がある人(それこそ、高校生とかにも)全ての人に一読いただきたい内容でした。
本書を読んで改めて思ったのは、
良いものを”作れば売れる”時代は終わった
という事です。(野菜に限らず、全てのものごとに対しても同じ事ですよね。)
逆説的に言うと、今売れているものは、上手くマーケティングができたから、だとも思っています。(SNSでの偶然の拡散、いわゆるバズりなども含めて。)
個人の農家が、テレビでCMを流しているような大企業に、広告宣伝で勝てる訳がないと思っていませんか??
今は様々なツールで、個人が発信できる時代になりました。
僕自身も、ネットとブログという手段を通じて、細々とですが、個人の発信をしている身です。
自分自身も、どんなに文字数を多く書いても、良い事を書いていたとしても、誰かに届かなければ意味がないと思っています。
誰にも知られずになくなってしまうには、あまりにももったいない、”良い物”がこの世にはまだまだあると思います。
ぜひ、あなた自身の手で多くの人へ、その”良い物”を世界中へ届けて欲しいです。
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